『まんがでわかる みんなの遺伝子の謎』

C・フランドリ/作 山内 豊明/監 山崎 瑞花/訳

西村書店/刊

定価2,090円(税込)

初心者でも分かりやすい形で説明、紹介されている

 子どもは親から生まれた以上、親に似ていることは誰しも分かることであろう。またそれが遺伝子と呼ばれることもよく知られているだろう。では、その遺伝子が具体的にどうやって生じているのかと問われると、正確に説明できる人が意外に少ないのではないかと思われる。

 本書では、セントラルドグマの流れという顕微鏡でも見えない世界で起っていることと、目の色など我々が把握できる身体的性質がどう関わっているのかを明確に教えている。さらにこの性質がどうやって代々伝わっているのかということや、メンデルの研究が遺伝研究のきっかけとなったことなどが紹介されている。

 目に見えない世界で生じていることゆえにイメージしにくく理解もしにくいという分野であるが、細胞内の小さな器官が強烈すぎる個性を持ったキャラクターとして絵が描かれているのではっきりと印象に残るという点で評価できるものである。

 また遺伝で学んだ優性・劣性という用語が顕性・潜性という用語に変更されるということを聞いた方も多いと思われる。本書ではこの顕性(優性)がどのような意味を持っているかということにも触れられている。他にも実験結果は分かるが、どのような仕組みでそうなるのかが分かりにくいということについて初心者でも分かりやすい形で説明がされている。

 遺伝に関するおぼろげなイメージに確かな背景知識を強い印象と共に与えてくれるという点で、本書は評価できるものである。

(評・立命館中・高等学校 教諭 和田 篤史)

(月刊MORGEN archives2021)

関連記事一覧