『世界史講師が語る教科書が教えてくれない「保守」って何?』

「保守」誤解の背景

 日本では戦後、保守という言葉が悪い意味でずっと使われて来たんです。保守っていうのは、つまり進歩の逆で、素晴らしい進歩の足を引っ張る旧勢力だ、みたいなね(笑い)。でも、本当はそうじゃなくて、本来のその国の在り方に戻ろう、というのが保守なんです。     

 実は、世界の中で保守思想が育まれた国ってほんの一部なんですよ。例えば、ロシアや中国に保守思想ってないんです。何故ないかと言えば、護るべきものがないから。というのも、大陸国家はその歴史上、絶えず異民族の侵攻で王朝交代が起き、外国人の王様がいるのが当たり前だった。で、外国人の君主たちは、それ以前の体制、文化を破壊するもんだから、護るべき伝統が残らなかったんです。

 中国なんてあれだけ4000年の歴史を喧伝するけども、半分は外国人の王朝で、古いものなんて全く残っていない。あるのは万里の長城や故宮みたいな物理的に壊すのが大変なものだけで、他は何にもないんです。もっと極端な例で言うと、アフガニスタン。アフガニスタンは、元々仏教国だったのが、途中でイスラムに変わったんだけど、当然、イスラム教は仏教を徹底的に否定するわけです。結果、何も残らない。

島国が育んだ「保守」

 ところが、イギリスは島国だったので、そういう徹底した侵略を免れた。そのおかげで古い文化が残ったんです。それはキリスト教以前の文化でハロウィンなんかがそうです。あれは、イギリス古来の多神教の名残りで、あのお化けたちはその古い神々なんです。他にはハリーポッターに出てくるお化けなんかもそうですね。

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