『「問う力」を育てる理論と実践――問い・質問・発問の仕方を探る』

教育現場はどう対応を

 今までは授業で教師が発問していた部分を、今度は生徒たち自身で問いを作るように導く教育に変わるわけです。先生方からすれば、自分たちの受けた教育と違うものを生徒たちに教えることになるので、当然、最初は戸惑いはあるでしょう。

 ただ、従来の知識暗記型、あるいは伝達型の教育は、本書の知識活用型の教育と対立するものではないと思います。どちらかといえば、今回、新たに加わった知識活用型の土台となるのが、今までの知識暗記・伝達型です。つまり二つは完全に繋がっていて、どちらか一方でもいけません。従来の暗記型教育をやりつつも、それに加えて知識活用型の実践も入れていく、という認識でいいと思います。

 これについては、本書の第4章に「児童の問いに基づいた小学校道徳授業の展開――木下竹次と手塚岸衛の大正自由教育の実践を踏まえて」という好例があって、授業の前半は先生が生徒に扱う題材について解説をし、後半に児童にそれについての問いを作ってもらったり、その問いに基づいた話し合いを行っている。

 これはつまり、前半は従来の知識暗記・伝達型、後半に知識活用型をやっているわけで、やはり知識のインプットなしにアウトプットは出来ないということなんです。そういう意味で先生方は必要以上に身構える必要はないと思います。

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