野鳥と私たちの暮らし 第1回 ムクドリ

 4月から5月には、木の洞や建物の隙間に巣を造って繁殖しますが、雛が巣立つ6月頃から群れになり、夏、秋、冬を通し群れで生活する鳥です。春から夏には、昆虫やミミズ等の動物が餌ですが、秋から冬にはリンゴ、カキ等の果実が主な餌になります。日中は農耕地などに群れていますが、夜には集団で塒を取る習性があります。

 夏には各地の林に分散し小群で塒をとりますが、秋から冬には次第に大群となり、冬には数万羽の大群で塒をとることもあります。今から50年ほど前までは、ムクドリは郊外の竹藪や山地の林に塒をとっていました。ところが、最近では市街地の繁華街に大軍で塒をとるようになりました(写真2)。

市街地のヒマラヤスギに塒をとるムクドリの大群

なぜ市街地に塒場所を変えたのか

 その理由は、ムクドリにとって人は以前のように怖い存在でなくなったからです。今から60年ほど前の私が子供の頃には、空気銃などでムクドリやスズメ等の野鳥を捕って食べていました。その頃は、野鳥にとって人は怖い存在でした。しかし、その後、野鳥を捕獲することが禁じられ、人が野鳥に危害を加えることがなくなったからです。

 その結果、野鳥は数十年かけて郊外に塒をとるよりも、一晩中明るく、夜も人や車が絶えない市街地の方が、フクロウなどの夜の天敵から安全で、かつ快適に夜を過ごせることを学んだからです。人がいる場所の方が夜に安全であることを学んだのは、ムクドリだけではありません。スズメやカラスなどの野鳥も同様で、多くの野鳥が人の生活圏に進出し、市街地に塒をとるようになりました。

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