志賀勝明さん(元漁師・「鈴木安蔵を讃える会」会長)

 その話を安蔵さんの義理の姪御さんから聞いて、思わず地元の誇りの喪失に、「何を勝手言っとる」と激高しかけたけども、なにしろ個人の問題だからどうしようもない。仕方なく、元福島大学の学長だった吉原泰助さん、安蔵の教え子で立正大学の名誉教授の金子勝さんらに相談すると、「これは困ったな、地元でなんとか頑張って残してもらいたいよ」とこう言われる。そう言われても何も思い浮かばず、今度は、原町の「九条の会」の平田会長、当時の市長だった桜井市長に話を持ち掛けると、「分かった、協力するから」と言ってくれて。それから少しあって文科省に文化財として登録されたという報告があったんです。

 で、なんとか残るのには決まったわけだけど、今度はそれをどう維持していくかという問題が出て来た。私としては、そこまでお膳立てすれば後は市がなんとかしてくれると思っていたわけだけど、当てが外れたかたちです。仕方なく再度、吉原、金子両先生に相談すると、それじゃあ組織を作ろうとなった。名称は「鈴木安蔵を讃える会」がいいだろう、と。それで発足して。

活動をはじめてみて、周りの反応は

 最初、福島民報で取り上げられたときは、やっぱり地元の反応は鈍かったですね。でも、それが東京新聞で取り上げられるとたちまち火がついて。とはいえ、日本国憲法の原案を作った「鈴木安蔵」という名前は、大抵の教科書には出てこないので、そこは難しかったですね。現行の教育では、小学校の高学年になると「基本的人権の尊重」をはじめとした日本国憲法の特徴は習うけど、その大元に関わった日本人のことには一切触れない。だから当然、誰も知らないんです。知っているのは、大学の教授か弁護士の先生たちだけで、それ以外の人たちはまったく知らない。私はそれを小高の街を案内しながら痛感して……。この活動の本質はそこで、今の素晴らしい憲法の原案を書いた日本人のことを、もっと多くの人に知ってもらいたいわけなんです。

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