フクロウ

野鳥と私たちの暮らし第3回 森の賢者 フクロウ

 巣箱で繁殖するつがいを調査し驚いたことは、雛が孵化するころになると、巣の中にたくさんの餌を蓄えていたことでした。多い例では、13匹のネズミを蓄えていました。蓄えていた餌の多くはノネズミでしたが、ヒヨドリなど鳥も蓄えていました。雛のために、あらかじめ餌を蓄えて準備することは、人間が生まれてくる赤ん坊のためにさまざまな準備をするのと似ていますが、鳥では珍しいことです。

解明されたフクロウの繁殖生態

 フクロウは、本来は樹洞で繁殖する鳥です。そのフクロウが、調査を開始して3年目に崖にできた穴で繁殖しているのを見つけました。外から巣の中の様子が丸見えです(写真2)。近くに小型カメラを設置し、そこから50mほど離れたテントの中に置いたビデオデッキで、巣の中の様子を録画しました。夜には、弱いライトの光で馴らし、卵の時期から雛が巣立つまでの約1ヶ月間、毎日24時間連続して巣の中の様子を撮影しました。

写真② 縫いぐるみのようにかわいい雛たち。まだ、ネズミを丸のみできない。

 撮影されたビデオを解析し分かったことは、子育ての仕事は雌雄ではっきり分かれていることでした。巣に留まり、産卵し、卵を温め雛の世話をするのは雌で、巣にいる雌や雛に餌を運んでくるのは雄の仕事でした。雄が運んで来た餌を雌は自分で食べるだけでなく、雛が孵化するころには巣に蓄え、雛が孵化すると少しずつちぎって与えていました。

 孵化後2週間がたち、ヒナに黒い羽毛が見られる頃になると、雌親も餌を捕りに外へ出かけます。巣に運び込まれた餌の約8割は、ネズミ、モグラ、リスなどの哺乳類で、残りは鳥類、カエルなどの両生類でした。意外なことに、巣に餌が運び込まれたうちの25%は、朝の6時から夕方6時までの日中でした。夜だけでなく、日中も餌を捕って巣に運んできたのです。夜行性であっても、繁殖時期には日中も狩りをしていることがわかりました。

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