『あなたのペットが迷子になっても ペット探偵が出会った人と動物の愛の物語』

遠藤 匡王/著

緑書房/刊

本体1,800円(税別)

ペットの命を守るのは飼い主の大切な役目

 ペットの迷子といえば、動物が逃げ出すものとばかり思っていたが、どうやらそうではないらしい。外出先で連れ去られる、元カレが家に侵入して盗み出す。そうなるとただ探し出すだけではなく、取り返す算段をしなくてはいけない。これはもう素人にはとても手に負えないだろう。しかし動物自らが逃げ出した場合にも、探し出すことは素人にはとても難しい。
 私は犬の保護活動に携わっているので、迷子犬の話を何度も聞いたことがある。捜索に加わったこともある。それは途方もなく、手ごたえもない、ほとんど不毛な捜索であり、見つけて捕まえられたのは一度だけである。大半のケースは脱走後ほとんどすぐに自動車事故で命を落とした。著者は捜索を明るくポジティブに描いているが、飼い主の暗い絶望と捜索への焦りを想像すると、現場は決して楽しいものではないだろう。ただ動物が好きというだけではペット探偵にはなれそうもない。
 著者は飼い主の喜ぶ顔が励みになると言う。なるほどと思った。捜索には試行錯誤して努力した成果があり、飼い主の喜びがある。それはやりがいのある仕事であろう。しかしやはり本当に大変な仕事だと思う。
著者の紹介する探偵七つ道具を見てもそれがわかる。高度な技術と動物の習性の知識、そして気力と体力がなくてはできない仕事だと思う。とはいえ、この本を読んで、動物を探し出す際に素人でもできることがあると分かったので、参考にしたい。
 しかしまずは自分のペットを逃がさないことである。ペット探偵さんの仕事を邪魔するようで申し訳ないが、ペットの命を守るのは飼い主の大切な役目である。

(評・清松 素子)

(月間MORGENarchives2020)

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