『つながる政治学 12の問いから考える』

平井 一臣、土肥 勲嗣/編著

法律文化社/刊

本体2,800円(税別)

政治には多様な意見や異論が必要

 表紙を飾る様々な色の木の葉は一筆描きで、一体どこにつながっているのだろうか。本書は、政治に関する12の問いから、私たちが政治とどのようにつながっているかを考えさせてくれる。数年後に選挙権を得る、または得たばかりの私たち高校生にぴったりの本である。

 特に印象的だったのは第3章「地域の政治は変わるのか」だ。「地域創生」、「地域消滅」という言葉が当たり前に飛び交うような今日においては、確かに地域はあくまでも国家の一部にすぎず、東京都の関係を考えずには成り立たないのかもしれない。しかし筆者は、「地方の政治、自治体の政治は、私たちが政治に参加するうえで可能性に満ちた空間」と述べている。それぞれの地域がより暮らしやすい地域になるように、同じ地域に住む人々と意見を出し合うことが大切なのだ。私自身も、国政に比べて地方政治を良く知らず、あまり関心を持っていなかったことに改めて気付かされた。また、生まれ育ったふるさとへの愛着がある反面、東京への憧れもあり、将来を考えるうえで複雑な気持ちでいた私も、地方政治が住民にどれだけ影響を与えるかを知ることができた。東京することは私たちの意思表示となり、それぞれの地域に希望を与えることが出できるのだ。「政治は私たちには関係ない」「政治は手が届かない」と思っている人も少なくないかもしれない。しかし、政治には多様な意見や異論が必要だ。政治を「食わず嫌い」にならないために、多くの人に自分で味わい、政治につながる端緒にしてもらいたい一冊である。

(評・鹿児島県 志學館高等部2年 橋口 愛未)

(月刊MORGEN archive2020)

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