野鳥と私たちの暮らし 第4回 草本の種子食に適応した鳥 カワラヒワ

卒論テーマに選んだ鳥

 私が鳥の研究をするきっかけとなったのは、信州大学教育学部に入学早々、戸隠探鳥会に参加し、戸隠の自然とそこに棲む野鳥に魅せられたことでした。当時、私が所属した研究室では、学生一人一人がそれぞれ別の種類の鳥を卒論研究のテーマに選び、それぞれの鳥のつがいの雌雄が巣造りから始まり、産卵、抱卵、育雛をどのように協力し子育てしているかを研究していました。 年生になった私が選んだのは、カワラヒワでした。

 この鳥は、スズメとほぼ同じ大きさの鳥で、スズメ同様にごく身近な鳥です。雄は体全体が緑色(写真上)、雌は雄より白っぽく(写真2)、どちらも飛ぶと翼の黄色い模様が目立ちます。白い大きな嘴もこの鳥の特徴で、英名はOriental Green-finchです。日本では北海道から九州にかけて繁殖していますが、北海道の個体は冬には南に移動し、沖縄では冬の時期に訪れる鳥です。

写真2 雄に比べ白っぽい雌

 最初の年は、この鳥のつがいの雌雄がどのように繁殖行動を分担し子育てをしているかについて調査しました。翌年からは、河原で群れている冬の間に多数の個体を捕獲し、足輪をつけて個体識別ができるようにし、年間通してのこの鳥の生態を調査しました。

 その結果、冬に河原で群れていたこの鳥は、春になるとその周辺にある村落に分散し、つがいごとに庭木に巣を造り、雛を育てた後、夏には農耕地で過ごし、秋から冬には河原での群れ生活に戻ることを明らかにしました。季節により生活する場所を変えていたのです。

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