『ソロモン諸島でビブリオバトル ぼくが届けた本との出会い』

益井 博史/著

子どもの未来社/刊

本体1,400円(税別)

異文化交流は互いの歴史を認識し理解し合うこと

 ビブリオバトルというゲームを知っているだろうか。自分のお勧めの本をバトラーと呼ばれる参加者が順に紹介していき、最も興味を引く紹介をしたバトラー、つまり優勝者を最後に投票で決めるというゲームだ。

 本書『ソロモン諸島でビブリオバトル』は、著者である益井博史氏が青年海外協力隊の一員としてソロモン諸島に渡り、ビブリオバトルを通して子供たちに本の面白さを伝え読書を習慣化させていくまでの約二年間が、著者のユニークな心の内も所々に散りばめながら著された一冊だ。

 しかし、そこに到達するまでの道のりは決して順風満帆なものではなかった。益井氏の前に、ある謎が立ちはだかったのだ。それはソロモン諸島の子供たちの読書への意欲は高いにも拘わらず、ビブリオバトルへの意識が低いという謎だった。悩み抜いた末に彼が閃いたアイディアは、一見単純ではあるがソロモン諸島の文化も含むなどの計算が為されており、彼が本書の中で“ソロモンの精霊”と表現したその閃きの瞬間、そしてそこに行き着くまでの過程が私に最も興奮を与えた。実体のない敵への大逆転を果たした様に私には感ぜられたのだ。

 異文化交流において最も大切なことは、外国人という存在の「現在の姿」のみを認識するのではなく、彼らの「過去の姿」も踏まえて認識していくことだと私は本書から学ばせていただいた。地球上の人間ならば、誰にでも歴史は必ず存在する。互いにその歴史を認識・理解し合うことが異文化交流に向けての第一歩となるのではないだろうか。

(評・上智大学法学部地球環境法学科3年 川崎 快人)

(月刊MORGEN archives2020)

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