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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの生活 第5回 カッコウの新たな宿主 オナガ

尾の長いスマートな鳥

 オナガ(尾長)は、体長の半分以上が尾で、体の上面が水色をした上品な姿をした鳥です(写真上)。しかし、声を聞くとがっかりするほど声は良くない鳥です。本州中部から東北にかけての東日本に留鳥として生息し、1970年代までは九州北部から本州に広く生息していました。それが1980年代以降、西日本では見られなくなった鳥です。

 昆虫、果実、種子を餌とする雑食性の鳥で、ほぼ年間を通して群れで生活しています。私がこの鳥とかかわりを持ったのは、カッコウの研究からでした。

カッコウによるオナガへの托卵開始

 カワラヒワの研究の後に私が次の研究テーマとしたのがカッコウの托卵研究でした。この鳥は自分では子供を育てず、他の鳥に育てさせる托卵という習性を持つ鳥です。托卵という巧妙なずる賢い繁殖の仕方がなぜ進化しえたのかに興味を持ったからです。以来、30歳から50歳代半ばまで25年間にわたりカッコウの研究に従事しました。

 1985年から長野市郊外の千曲川でカッコウの研究を開始し驚いたことは、オナガへのカッコウの托卵の急速な広まりでした。当時、オナガの巣の半分以上がカッコウに托卵されていたのです。全国的にみてもオナガへのカッコウの托卵が始まったのは、今から65年ほど前の1956年のことです。私が子供の頃千曲川にカッコウはいませんでした。

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