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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの生活 第5回 カッコウの新たな宿主 オナガ

 その頃、カッコウは標高900m以上の高原に棲む鳥であったのに対し、オナガは平地に棲む鳥で、両者の分布は重なっていませんでした。その後、オナガは平地から高原へ、逆にカッコウは高原から平地に分布を広げたのです。その結果、両者の分布が重なり、長野県で1974年に最初のオナガへの托卵が見つかりました。その後、千曲川などの平地にも急速に広まり、1980年代の終わりにはオナガの分布域全域にカッコウの托卵が広がったのです。

 これほど急速にオナガへの托卵が広まったのは、オナガが托卵に対する対抗手段を持っていなかったからです。その結果、オナガに托卵するカッコウの数が急増し、一つの巣に多数のカッコウが托卵する異常事態となったのです。

 オナガへの托卵が始まって以後、各地でオナガの数が減少しました。その一例が長野市郊外の川中島です。ここでは、托卵が始まる前の1986年には259羽のオナガが生息していたのですが、托卵が本格的に始まっていた1988年には77羽に減少しました。また、地域によってはカッコウの托卵が始まって以後、オナガがいなくなった地域もありました。

オナガによる反撃

 最初、カッコウに一方的に托卵されていたオナガは、その後反撃に出たのです。調査を開始した当初、千曲川で托卵されたカッコウ卵の8割はオナガに受け入れられていたのですが、その割合はその後次第に減少し、10年後には3割ほどになりました。カッコウの托卵に気づき、巣を放棄する個体やカッコウ卵を巣から取り除く個体が増加したのです。

 長野県内で当時、オナガへの托卵歴が最も古かったのが安曇野(開始から約20年)、最も新しかったのが野辺山(開始から10年)、その中間が長野市郊外の千曲川でした。これら3地域で、オナガの卵識別能力を比較してみました。

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