『ウソつきないきもの図鑑』

實吉 達郎/監 来栖 美憂/著 まつむら あきひろ/絵

青春出版社/刊

本体1,020円(税別)

生き物の生きる知恵が世界が摩訶不思議

 思わず「えー!」と言ってしまう本。私たちがよく知っている生き物も生き残るために《擬態》していたと知ることができる一冊です。

 私たち人間からすると「どうして?」と思うようなことも、その生き物たちにとっては長い年月の中で編み出された《生きる知恵》だったのだとわかります。生き物の世界は奇妙キテレツ摩訶不思議の【ウソ】だらけ。まだまだ解明されていないことがたくさんあるのです。

 個人的にすごいと思ったのは『ツノトカゲ』です。ピンチのときは、目から血のビームを出して攻撃するという必殺技を隠し持っている唯一無二の生き物。これも身を守る手段です。さらにその血には毒性物質が含まれており、猛毒ではないものの敵を混乱状態に陥れることができるだけの毒素で、外しても打ち直しのきく高性能な能力です。

 また、「人間でも同じようなことあるでしょ!」と言われているような、添えられている紹介分が面白く笑えます。図鑑とはいえ、絵が可愛らしく子ども向けに見えますが、大人でも楽しめる作品です。

 私がこれまでに見たことのある昆虫や魚の模様には、こんな意味や知恵があったのかと、学ぶことができました。生き物の世界は弱肉強食です。そんな過酷な環境で生き残るためにどれだけの工夫をしているのかわかりました。今、生き残っている生物は《正解》を見つけたからこそ、なのです。

 世の中の生き物は人間にはできない【ウソ】をつくことをこの本で是非お楽しみください。

(評・石川県立羽咋高等学校3年 倉知 沙妃)

(月刊MORGEN archives2020)

関連記事一覧