小野善郎

『思春期を生きる——高校生、迷っていい、悩んでいい、不安でいい』

暗闇を抜ける鍵はどこに

 まずは、親友に打ち明けて、悩みを共有すること。ただ、そこで終わってしまうと、単なる傷のなめ合いになってしまう。それでは、本当の解決には繋がっていかない。それだから、最終的には、大人とどう繋がっていくか、というのが大事になるんだけど、親との接触は思春期という事情がそれを阻む。そこで重要になるのが、学校の先生だったり、塾の先生といった、親とは距離感の違う大人の存在なんです。

思春期は回避不能

 思春期に抱える、迷いや悩みには、基本的に答えはありません。だからこそ、答えを見つけようとすればするほど、どんどん深みにはまってゆく……。でも、その悩みこそ思春期の本質なのだから、絶対に避けては通れない。なので、「悩みを抱きかかえながら、いかに思春期を通り抜けるか」というのが唯一の突破手段です。今回の本を通して、一番子どもたちに伝えたかったのもそれなんですよ。

思春期のトラブル事情

 生真面目に向き合いすぎる、思春期を先送りにする、二つの問題パターンがあります。前者は、思春期に答えを求めてしまうケース。その結果、虚無感、無力感に苛まれ、絶望し、死すら願うようになる。そうじゃなくて、答えは出ないけど、色々試行錯誤してみて、悩み、苦しむのが、思春期の一番の仕事なんだよ、と。いつもそう訴えるんですが、どうしても、学校の教育現場、家庭では、受験や内申書が優先される。「悩みは重々分かるけど、今は目の前の目標に集中しよう。その迷いは、大学に入ってから、思う存分考えればいい」こういうわけです。しかし、先送りの代償は大きく、やがて巨大な不安となって心に重くのしかかります。その結果、せっかく苦労して良い大学に入っても、そこで自分を見失ってしまったり……。やはり、悩むべきときにきっちり悩みぬいておくのが、一番の方法だと思います。

今を大切に生きる

 思春期は人間の成長、発達の段階の中で、とても大事な固有の時期です。この時期にしなければならないこと、この時期でなければならないことというのが、やっぱりある。でもそれが、今の社会では、社会制度や教育制度といった人為的なものに当てはめられることによって軽視されているところがあるんです。いつも、目先の結果を求められ、一喜一憂を繰り返しているかもしれないけど、それがすべてじゃないんだよ、と。思春期は自信の持てない子がとても多い。でも、それで普通なんですよ。それを否定的に捉える必要はない。まだまだ、人生の結果の出る時期ではないし、逆に、この時期に学業などで達成感に満ちているなら、かえって心配になるくらいです。ゆっくりでいいから一歩一歩噛みしめ、踏みしめて。思春期の目標は大人としてスタートラインに立つこと、すべてはそこから始まるんです。

おの よしろう 1959年愛知県生まれ。和歌山県立医科大学卒業後、同附属病院研修医、国保日高総合病院精神科委員などを経て、宮城県子ども総合センター技術次長、宮城県精神保健福祉センター所長を歴任。2010年より和歌山県精神保健センター所長。精神保健指定医、日本児童青年精神医学会認定医、子どものこころ専門医。主著:『思春期の育ちと高校教育』(福村出版、2018)、『ラター 児童青年精神医学【原書第6版】』(明石書店、2018)、『思春期の子どもと親の関係性』(福村出版、2016)など

(月刊MORGEN archives2019)

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