小野善郎

『思春期を生きる——高校生、迷っていい、悩んでいい、不安でいい』

青春の病「不登校」

 私たち児童精神科医が、最も多く目にする思春期のトラブルが、いわゆる「不登校」です。本来、思春期の2大問題行動と言えば「非行」と「不登校」です。この二つはまったく性質が違っていて、非行は学校の進路指導室や、警察の補導などで対処する。だから、管轄違いとでも言いますか、日本だとそういった子どもは児童精神科にはあまり来ないんですね。

 アメリカは違っていて、両方とも、カウンセリングを受けにくる。これは国、地域ごとに対応が違うようです。「学校に行けない、うまくやっていけない」私たちの所に来るのは、そういう色々の理由で登校が出来なくなった子どもたちです。不登校児に共通するのは、学校で抱えた悩みやつまずきを、親や教師に限界まで打ち明けないこと。根底にあるのは、「こんなことで悩んでるのは自分くらいだ」という切実な思い込みです。本当はみんな同じように悩んでいる、そんな概念があればきっと周りにも相談しやすいはずなんですが、横並びの価値観がそれを阻む。子どもたちは自らの心に追い込まれ学校に行けなくなるのです。

暗闇を抜ける鍵はどこに

 まずは、親友に打ち明けて、悩みを共有すること。ただ、そこで終わってしまうと、単なる傷のなめ合いになってしまう。それでは、本当の解決には繋がっていかない。それだから、最終的には、大人とどう繋がっていくか、というのが大事になるんだけど、親との接触は思春期という事情がそれを阻む。そこで重要になるのが、学校の先生だったり、塾の先生といった、親とは距離感の違う大人の存在なんです。

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