『アナログゲーム療育~幼児期から学齢期まで~』

松本 太一さん(障害児療育アドバイザー)

大切なのは幼児期からコミュニケーション力を育てること

 リングに通した棒の束を順に引き抜き、崩した方が負けの『スティッキー』。カードに描かれた漫画絵のセリフを考える『ヒットマンガ』。いずれもいわゆる「アナログゲームである。これらを使ったまったく新しい発達障害児療育……、それが『アナログゲーム療育』(ぶどう社刊)だ。松本太一さんはフリーの障害児療育アドバイザーである。発達障害を取り巻く福祉環境は極端な逆三角形だ。幼児期のケアこそ手厚いが、小学生以降、ほぼ社会のサポートはないと言っていい。これに希薄化する現代社会の横の繋がりが拍車をかける。孤立するすべての児童と保護者へ――。立てた標の真意を聞いた。

発達障害者支援活動を始められたきっかけは

 ちょうど2000年ごろのことです。「発達障害」というのが少しずつ世間に注目され始めた。そのころわたしは大学生で、人生の目標を探していた。在籍する中央大学の総合政策学部は、学問を総合的に修めることを目的としていて、そんな中でわたしも自分に何ができるか日々考えていました。そこに引っかかったのが発達障害だった。というのも、わたし自身、発達障害というほどではないものの学習障害を抱えて育ったきたからです。子どものころから「書く」のが苦手でさんざん苦労してきた。こうした、外からは分かりづらい障害を抱える子をどうにか救えないだろうか、と。それで、大学院では障害児療育をやろうと決めたんです。

療育本の着想は

 大学院卒業後、発達障害を抱える大人の就職支援をしたんです。そのとき、企業の求めるコミュニケーション能力の重要性を嫌というほど痛感させられた。それまでもコミュニケーションスキルを伸ばす療法はあるにはありました。でもそれは「人にあったら挨拶する」「悲しい顔の子がいたら『どうしたの』と声をかける」という程度の、こういうときにはこう対応するというパターンでしかなかったんです。ところが人事が見るのは、例えば、集団面接なら他人の発言のときの仕草です。いかに周囲に気を配るか――発達障害にとってこれは鬼門なんですね。その解決法と支援システムの構築が必要だ、と思った。

療育法完成までの道のりは

 発達障害者の社会参加の最重要課題がコミュニケーション能力だというのは分かった。と、同時に分かってきたことがあったんです。そうした社会適応能力は、いざ就職となってから職業訓練のようにやるのでは、なかなか身につかない。子どものころからの、子ども同士の関り合いが必要不可欠なんです。そこで、まずは子どもたちを知ろうと「放課後等デイサービス」――放課後に障害児が通う教室に入ることにした。そこは毎日10人くらいの子どもが通ってくる教室だった。年齢は小学生から高校生と幅広い。まだ言葉が出てこない子もいれば、IQが高すぎて、周りと話が合わないという子もいる。混然と過ごす子供たちを見ながら、いったいどうすればこの子たちに臨機応変な社会性を安全に楽しく学ばせられるか、と考えた。そこで着目したのがゲームというツールだった。ゲームを通じてより柔軟なコミュニケーション能力が身につくのではないか、そう考えたんです。

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