『みんなで創るミライの学校 21世紀の学びのカタチ』

辻 正矩・藤田 美保・守安 あゆみ・佐野 純/著

築地書館/刊

本体1,600円(税別)

16年を追った理想の学び場のドキュメント

 大阪の「箕面こどもの森学園」開校からの16年を追った理想の学び場のドキュメントである。そこでの主人公である子どもたち、スタッフたちは、対等に「人」として呼ばれる。「子ども」や「生徒」ではなく、「人」として呼ばれ、尊重される。正に、憲法13条が日々実践されている。子どもたちの自己肯定感を育むための基本である「尊重」と「対等」が、文章の中に滲み出ている。スタッフのことは先生と呼ばずニックネームで呼び合う。話し合うときは、みんなで丸く座ってサークル対話をするというように、形になって現れている。

 第一章の扉に「教師の側から知識を授けるよりも、まず知識を求める動機を子どもたちが持つような学校が、真の学校である」(ジョン・デューイ)とある。この学校には、真の動機が満ちている。それは、時間をかけて練られた「子どもの森教育のエッセンス」の11項目のスタンスから導かれる。〈自律して学習する〉など、学びの自己決定権が保証されているからこそ生まれる本物の「動機」である。競争や管理から生まれる見せかけの「動機」ではない。

 小学部の学びをシュノーケリングに例えている。誰かがやっているのを見るなどしながら、「面白そうだからやってみよう!」という、自分の興味から出発して、自分に戻っていくような学びである。中学部の学びは、スキューバダイビングに例えている。自分の中に何があるのか、自分は何が本当に好きなのか、深く潜って(自分と向き合って)3年間かけて見つける。卒業式は大海原を自由に泳ぐ海亀のようである。

(評・埼玉県立小鹿野高等学校 教諭 江田 伸男)

(月刊MORGEN archives2020)

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