『光の子ども 3』

小林 エリカ/著

リトルモア/刊

本体1,800円(税別)

放射能の明暗の姿を描いたコミック

『光のこども』は三部作のコミックで、「放射能」の表裏一体の歴史が描かれている。漫画の枠を超えたアートのようなイラストとレイアウトが不思議な叙情を醸し出している。

 第三巻の時代は第一次世界大戦から一九二五(大正十四)年までである。四人の女性科学者が登場する。

 幕開けは第一次大戦で使用された大量破壊兵器としての毒ガスの物語だ。毒ガス開発の指導的立場にあったハーバーの妻クララ・イヴァーマールは毒ガス製造に反対していた。

 この時代の放射能研究を牽引したリーゼ・マイトナー。毒ガス開発にかかわったハーンの研究パートナーであるリーゼは従軍看護婦として戦場の悲惨さを知り、放射線の研究に戻り、評価を勝ち得た。

 また、アインシュタインの最初の妻ミレヴァ・マリッチ。研究をあきらめ家庭に入ったが不幸が訪れる。

 時が過ぎ、ヒトラーが表舞台に現れた頃、日本ではのちに放射線研究者となる湯浅年子がアインシュタインに憧れていた。

 ローマ教皇フランシスコは十一月、広島と長崎を訪れ、「戦争のために原子力を使用することは、現代において、犯罪以外の何ものでもありません.」(広島)と述べた。戦争に加担する科学は犯罪なのだ。

 放射能の明暗の姿を描いたこのコミックは、女性が研究と家庭を両立しえない時代の彼女らの視線を通して、科学の人類への貢献と、そして兵器ともなりうる危うさを、強く読み手に訴えかけ来るのである。

(評・青山学院横浜英和中学高等学校 司書 石井 妙子)

(月刊MORGEN archives2019)

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