• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

半崎 美子さん(シンガーソングライター)

歌との出会いは高校で

 そうですね。もちろんそれまでも歌うのは好きで、両親の留守を見計らってはテーブルの上をステージに見立て、歌ったりはしていたんです。でも、迎えた高校の学園祭、はじめて大勢の前で壇上から自分の歌を披露するという経験をして……。家やカラオケで家族や友人を相手にするのとは全く違うその感触に、なにか手応えのようなものを感じたんですね。

当時憧れた歌手は

 それが意外と思い当たらないんですよ。もちろん、テレビで歌番組を見たり、CDを聞いたりはしていたし、「ああこんなふうにテレビに出て歌ってみたいな」という漠然とした思いはある。でも性格的にあんまりひとりの人や歌に熱中する感じじゃなくて……。ただ、「自分の歌が自分より長生きしてほしい」というのはずっと思っていた。だから「私の歌が教科書に載る」というのが昔からの夢なんです。

歌への執着のルーツは

 それはおそらく、学生時代に聞いていた『カーペンターズ』が根っこにあるんじゃないかと思います。姉から借りたそのCDに『ドリームズ・カム・トゥルー』、『渡辺美里』をエンドレスで流すのが、そのころの私のルーティンだった。なかでも『カーペンターズ』は日本での人気が再燃中で、私も友人たちと一緒に夢中になって聞いていました。

 自分を虜にしたその歌い手が、実はずっと前に亡くなっていると知ったのは、それからしばらくしてからのことでした。「音楽ってこうして遺っていくんだ――」アーティストの作る楽曲は、国境、世代なにもかもを軽々と飛び越えて、北海道の片田舎の中学生の耳と心に足跡を残してゆく。そう気付いたときに、もし自分自身がこの世からいなくなっても、曲のなかでずっと生き続けられる、と強く感じたんですね。

続きを読む
2 / 4

関連記事一覧