• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

中村 太地さん(将棋棋士)

 2017年10月、二人の棋士の間で静止した将棋盤に、いっせいに報道陣のフラッシュが光った。不世出の棋士・羽生前王座をやぶり、新たな王に座ったのは、中村太地さん。憧れの背中を追い続けて5年、3度目の対戦でのはじめての勝利だった。幼い日、父に手ほどかれ、羽生七冠に刺激を受け、そして開花した慧眼の見据える先は――。十代を訊いた。

東京のご出身ですね

 そうですね、府中で生まれて――。それからすぐに北海道の札幌や宮城県仙台市だとかの雪深い地域を、転勤族だった父について転々としました。ふたたび東京に戻って来たのは小学校低学年のときですね。

そのころの思い出は

 小さいころのことなのであまり覚えていませんが、やっぱり親に手をひかれ見に行った札幌雪祭りだとか、仙台の七夕祭りは心に残っていますね。

将棋との出会いは

 4歳のときです。そのころ家族は札幌で、冬は必ずといっていいほど雪に閉ざされる。外遊びができないわけです。そんな遊びたい盛りの僕に父が教えてくれたのが将棋だった。父は、ほかにもオセロなどさまざまのボードゲームを教えてくれましたが、とにかく一番興味を持ったのが将棋だった。

将棋のどこに魅力を

 一から全部を自分で考え、戦略を立て対戦する。で、勝てるとすごく嬉しい(笑)。そんな単純なことだと思うんですが……、どこにそんなに惹かれたのかと訊かれるといまだに答えに詰まりますね。ほんとに不思議ですよね。最初のころは父が手心を加え勝たせてくれたので、それが楽しかったのかもしれないですね。もっとも、元々、ジャンケンひとつとっても負けたくないくらいの負けず嫌いだったので、そこがマッチしたのかなとも思います。

将棋以外の興味は

 サッカーが好きで教室に通っていました。ほかにも、これはすぐにやめちゃいましたが、ピアノを習ったり、水泳教室にも行ったり……、いろんなことをやりましたね。

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