『脱・呪縛』

鎌田 實/著 こやま こいこ/画

理論社/刊

本体1,300円(税別)

「呪縛」解き放すお守りのような一冊

「この本は、そこらじゅうに転がっている呪縛から卒業するための、君の保健室。」

 その言葉を見た瞬間から、私は声にならない声を上げて救いを求め、その保健室へと足を運ぶような気持ちになった。

 ここでは、可愛らしいこやまこいこさんの挿絵と共に、私のような十代の子どもたちへ向けて、「呪縛から脱する方法」が語られていた。作者の経験談と助言をききながら、私自身、意識していなかった「呪縛」に気づかされ、そして、それを一つひとつ解いてもらっているような思いがした。

 私は、人に少しでも嫌われたくないという「呪縛」に捕らわれていた。親しい友人や家族と会話するときでさえ、ささいな言葉選びのミスで、彼らが離れていってしまうのではないかと、過度に気を遣い怯えて過ごしていた。そのなかで、本著から「仲間」「友達」という「呪縛」の中で相手の顔色を気にするよりも、自分の顔色を大切にしてちょうどよい距離感で接すれば良いという考えに触れることができ、肩の力がふっと抜けるような感覚になった。また、不条理な世界があったとしても一番大切なものは自由であり、人間関係は大切だがもっとも大切なのは自分自身であるということも教えていただいた。きっとそう簡単には私の後ろ向きな性格は変わらないが、この本を傍らに置き、折に触れ保健室に通って、「呪縛」を解いてもらおうと思う。

 心のもやもやや言葉にできない何かに縛られている子どもたちと、大人になったかつての子どもたちの心を支えるお守りのような一冊である。

(評・成女高等学校三年 鈴木 花音)

(月刊MORGEN archives2019)

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