『炎上弁護士 なぜ僕が100万回の殺害予告を受けることになったのか』

唐澤 貴洋/著

日本実業出版社/刊

本体1,400円(税別)

ネット社会に投影される人の心の闇

 今、ネット上でのやりとりが原因で様々な問題が発生し、日々新たな被害者が生まれている。ネットで誹謗中傷を受けていた依頼人を守ろうとした唐澤弁護士は、結果的に殺害予告を受けるなどの大変なトラブルに巻き込まれてしまう。この本を通して、インターネットやSNS利用で起り得るトラブルを多角的に知ることができ、その予防方法やその影響を最小限にとどめる方法を学ぶことができる。ただし、この本はネットトラブル対策が目的の本ではなく、「弁護士を目指すきっかけとなった出来事」「弁護士になったあとに起こった出来事」についてのノンフィクションドラマといえる。

 唐澤弁護士のこれまでの生き様は、とてつもなく凄まじい。自分の生き方に疑問を持った彼は、高校中退を選ぶ。そんな時期、年子の弟(高校生)は不良グループに目をつけられパーティー券を売りつけられるなど、パシリや恐喝の対象となっていた。不良たちから壮絶なリンチを受けたことが原因となり、弟さんは自決を選んでしまう。弟さんの死後、その事情を知った唐澤さんは大変なショックを受ける。弟さんを助けてあげることができなかった自分を責めた。その後彼は紆余曲折を経て、様々な試練を乗り越えつつ弁護士になる。ところが、弁護士になった後も大変なことは続くのである。

「人の心の闇」は「ネット社会」に投影されている。現代社会が、「互いを尊重し合う社会」からズレてしまっていることが影響している。この本を通じて、「人権とは、人生とは、幸せとは」について考えるきっかけにしよう。

(評・神奈川県立横浜緑ケ丘高等学校 総括教諭 伊福 龍哉)

(月刊MORGEN archives2019)

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