『〈超・多国籍学校〉は今日もにぎやか! 多文化共生ってなんだろう』

菊池 聡/著

岩波書店/刊

本体820円(税別)

多文化共生教育はすべての子どもが違いを認め合う

『心つながり 笑顔ひろがり 世界へはばたく』これは著者である菊池聡先生が15年間勤務された横浜市立飯田北いちょう小学校の学校教育目標です。多い年には全体の7割を超える「外国に関係のある児童」が在籍した〈超・多国籍学校〉でアジア各国、ブラジル等多様な言語と文化的な背景を持つ児童に対応するために取り組んできた少人数クラスでのきめ細かい指導や、地域ボランティア・大学との連携などの様々な実践が紹介されています。「多文化共生」とは、すべての子どもが「違いを認め合い、共に生活できる」ための教育であり、学校の教育や行事にも反映されていて、その成果は子どもたち自身が決めた「ともだちの国の言葉で挨拶しよう」という活動にも表れています。

 また、この学校では日本語教育を進める一方でそれぞれの母語を保持するための支援にも力を注いでいます。日本語が上達した子どもが親とのコミュニケーションに支障をきたすケースもあり、アイデンティティ確立の基となる母語を大切にすることが重要視されているのです。

 外国人労働者の受け入れを拡大する政策が決定され今後日本への移民は想像を超える速さで増加していくことでしょう。スポーツの世界では陸上・野球・テニスと外国にルーツを持つ若者がめざましい活躍をしています。もちろん海外で働く日本人もさらに増えるでしょう。飯田北いちょう小学校の取り組みが全国の学校へと拡がっていき、外国から来た人たちが安心して暮らし共生できる未来が望まれます。

(評・袖ケ浦市立昭和中学校 読書指導員 松井 恭子)

(月刊MORGEN archives2019)

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