野鳥と私たちの暮らし 第14回 喧しくさえずる鳥 オオヨシキリ

新緑の5月に訪れる夏鳥

 オオヨシキリは、スズメよりやや大きく、雌雄ともに薄茶色をした地味な鳥です(写真上:枯れたオオブタクサにとまり、大きく口を開けてさえずるオオヨシキリの雄)。日本の他、東南アジア一帯からロシア東部とインドを含む地域に生息しています。

 日本など北で繁殖するものは、冬にはフイリッピン、マレー半島、スマトラ島などに渡ります。長野市郊外の千曲川では、毎年新緑の5月初めに最初の個体が南から渡ってきますが、西日本ではやや早く4月中旬、北海道では5月中旬に渡ってくる夏鳥です。

ヨシ原に棲む

 オオヨシキリが住む環境は、河川、湖沼、湿地などにあるヨシ原です。この鳥が南から渡って来たことは、独特の鳴き声で知ることができます。渡来の時期には芽生えたヨシの背丈がまだ低いので、前年の枯れヨシや柳などの木にとまって、ギョギョシ、ギョギョシ、ケケシー、ケケシーなどと雄が盛んにさえずり始めます。その鳴き声の「行々子(ギョギョシ)」は俳句の夏の季語となっています。

 最初の鳴き声を聞いた後、ヨシ原で鳴くオオヨシキリの数は日ごとに増えてゆき、雄同士の争いも盛んになって行きます。各雄のさえずっている範囲がなわばりですが、密度が増えるにしたがって各雄のさえずる範囲は狭まっていき、その範囲から他の雄を排除しようとしています。最終的に落ち着くなわばりの大きさは、ヨシ原を含む直径30mから40mほどの小さなものです。

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