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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

清々しき人々 第19回 ポルトガルを世界に飛躍させた エンリケ航海王子(1394‐1460)

武勇で活躍した王子 

 現在、ポルトガルとスペインが存在するイベリア半島は、かつてキリスト教国とイスラム教国の衝突の前線でした。七世紀初期にアラビア半島に登場したイスラム教徒はアフリカ北部を征服しながら西進、七一一年にジブラルタル海峡を横断してイベリア半島に上陸し、一時は半島全体を支配します。スペイン南部のグラナダにある世界遺産のアルハンブラ宮殿(図2)はイスラム様式の建物ですが、それは上記のような背景があるからです。

図2 アルハンブラ宮殿

 そこで八世紀初期からキリスト教国がイスラム教徒からイベリア半島を奪還する八〇〇年近い闘争が開始されますが、これはレコンキスタ(国土回復)と名付けられています。その経緯は省略しますが、今回の話題に関係するのが現在のポルトガルの位置に一三八五年に成立したポルトガル王国アヴィス王朝です。初代国王はジョアン一世で、その三男として一三九四年に誕生したのがエンリケ王子で、「発見のモニュメント」の先頭の人物です。

 エンリケは二一歳になった一四一四年、父親とともにジブラルタル海峡の対岸のアフリカにあるイスラム勢力の拠点セウタの攻撃に参加します。この戦闘での活躍はエンリケに騎士の称号と公爵の地位をもたらしますが、それ以上に偉大な歴史を開拓する運命を若者にもたらしました。西欧社会からは未踏であったアフリカ大陸の西岸を探検することや、さらに大陸の南端を周回してインドへ到達する航路を開拓する野望が芽生えたのです。

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