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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第16回 小さな猛禽 モズ

秋に聞かれる高鳴き

 モズのもう一つの鳴き声の特徴に秋の高鳴きがあります。秋の9月頃から、モズが「キーキー」といった大声で鳴くようになります。それを古くからモズの高鳴きと呼んでいます。高鳴きは、雄だけでなく、雌もします。秋にはこの高鳴きにより、雄も雌もなわばりを確立し、秋から冬には雌雄別々のなわばりで、それぞれ単独で過ごします。

 日本の多くの鳥は春に繁殖しますが、繁殖を終えた夏から秋にかけて古い羽から新しい羽に抜け替へる換羽をします。換羽中の鳥はひっそりと暮らしているのですが、渡をしない多くの留鳥では、換羽を終えた秋には翌年の繁殖に備えてさえずりなどの繁殖行動を再開します。

 秋に聞かれるモズの高鳴きも、換羽を終えた後に翌年の繁殖に備えた行動の一つと考えることができます。モズは私たちにとって身近な鳥ですので、夏の間目立たなかったモズが秋になると急に大声で鳴き始めることから、特に注目されたのでしょう。モズの高鳴きは、古くから注目され、秋の季語ともなっています。万葉集の下記の歌は、モズの高鳴を詠んだものです。

        秋の野の尾花が末に鳴く百舌鳥の声聞くらむか片侍つ吾妹

 また、与謝蕪村の下記の句もモズの高鳴を詠んだものです。

             草茎を失ふ百舌鳥の高音かな

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