• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

真藤 順丈さん(小説家)

 真藤順丈さんは異色の小説家だ。異色たる所以はそのデビューにあるが、なんと4つもの新人賞を受賞。しかも、それぞれがまったく違うジャンルで、純文からミステリー、果てはホラーと幅広い。直木賞受賞作の『宝島』は、沖縄の戦後史を瑞々しく描いた快作だ。サブカル全盛期の日本を全身で吸収し、21世紀に昇華する鬼才。その青春の地図を開いた。

どんな幼年期を

 東京の品川で生まれて。これといって特別なことはない、ごくごく月並みな少年時代でしたね。僕の育った70年代後半から80年代は、ちょうどサブカルチャーの全盛期だった。そんなこともあって、僕も周りの子たちと同様、ゲームや漫画に夢中になっていました。

当時お気に入りの漫画は

 小さいときは、それこそ、目につく少年漫画を手当たり次第読むという感じだった。はじめて意識して全集を集めたのは中学のとき。それが『手塚治虫』だったんです。手塚さんの作品を通して創作や話しづくりの基礎を学んだようなところがありますね。

手塚作品のどこに魅力を

 作品全体に流れる哲学というよりは、やっぱり、総合的なエンターテインメントとしての魅力が大きかったですね。

そのころの将来の夢は

 そんなふうだから、当然、中学のときは漫画家になりたかった。絵も得意でよく描いていました。結局、漫画家の夢は途中でやめてしまうんですが、その後、大学では映画に没頭し、そこから小説家です。当時から、″話しづくりや創作で食べられたらいいな″というのはずっと根っこにあったんだと思います。

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