『日本語を味わう名詩入門』(全20巻)

萩原 昌好/編

あすなろ書房/刊

各巻定価1,500円(税別)

『日本語を味わう 名詩入門 全20巻』—―すぐれた詩人たちの名詩を味わい、理解を深めることを目的に編まれたシリーズだ。宮沢賢治や中原中也、立原道造などの近代史をはじめ、石垣りん、谷川俊太郎、まど・みちおといった現代史までが、戦前戦後を貫いて収められ、それぞれ詩人別の作品集になっている。

 編者の萩原昌好さんはまだ戦後間もない日本の混沌の中で詩に親しんだという。本に込めた思いを聞いた。

世界を広げ、心を育てる

詩との出会いはいつごろ

 僕は、戦後、最初に小学校に上がった世代なんですよ。当時の日本は、引揚者はどんどん帰ってくる、教師は足りない、と、とにかく混沌としていました。

 そんな落ち着かない世相の中で、詩への興味を持ち始めたのは、小学校4年生のころ。受け持ちだった、いわゆる「文学少女」の女性教諭に影響を受けたのが始まりでした。教科書に載る、山村暮鳥や八木重吉の詩、それにヘンリー・ワーズワース・ロングフェローなどの翻訳詩は、どれも感動的で、心に深く突き刺さったのを憶えています。

 すぐに詩の世界にはまりこみ、詩作を重ねていると、ある時、先生が僕に内緒で作品を勝手に県の詩作コンクールに応募したんです。それがたまたま入選して、戸惑いながらも大きな喜びを感じた。それからというもの夢中でのめりこんでいきました。

『日本語を味わう名詞入門』の着想は

 5年ほど前のことです。あすなろ書房さんから、私が80年代に編んで好評を博した『少年少女のための日本名詞選集』を親本にして、新たなシリーズを出してみませんかというお話をいただいたんです。これは僕にとって渡りに船でね。実は以前の選集には、諸事情から、近代詩、現代詩がほとんど漏れていたんです。しかもここ30年ほど、現代詩人全集をはじめ、現代国語教育・研究に携わっていたこともあって、″では近現代詩を加えた選定に″という風に方向性が定まっていって。

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