『日本語を味わう名詩入門』(全20巻)

コンセプトには「教材研究」も含まれているとか

 戦後のまど・みちおや、石垣りんに関しては特にそうですね。学校の教育現場では、「詩作品をどう教えて良いかわかりずらい」という声を頻繁に耳にしますが、これは、小中学校の教育に対応する作品論が世に出ていないというのが大きな要因なんです。

 かつて『まんがで学習「奥の細道」を歩く』という作品を編んで、漫画から古典にアプローチを試みたこともありましたが、行数の少ない漫画では、どうしても表現が限られ、結果として、作品ではなく漫画がメインになってしまうんですね。そういった経験と観点から生み出されたのが、前身の『少年少女のための日本名詞選集』であり、その本流は、今シリーズでもしっかりと継承されています。

「絵」と「詩」の共存は難しいと

 そうですね、詩作に挟む挿絵は、あくまでカット程度に留め、その情景をそっくりそのまま描いてはいけません。特に子供にとってはどうしても絵が印象の中心に来てしまいがちですからね。目に飛び込んだ画像で先入観も植え付けられてしまいます。その点、『日本語を味わう名詞入門』にはふんだんにカットが盛り込まれていますが、いずれも詩の邪魔にならないように丁寧に配置、構成されています。

詩の選定で特に力を入れたところは

 一見すると易しいけれども内容としては難しい、そんな作品をうまく解説してまとめるのを心がけました。なにしろ、以前のシリーズに収録した詩を含め全て読み直して精査しましたから大変苦労しました。30年前と今とでは、読者に訴えかける内容や方法も、当然変わってくる。企図に沿いながら、山之口獏の風貌、作品の推敲課程や、石垣りんの生活感覚など、詩人一人ひとりの感性を取り出しては調べなおし、作品を吟味していきました。

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