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岡部 三知代さん(学芸員・竹中工務店ギャラリーエークワッド副館長)

 東京の竹中工務店本店には500名の設計部員が在籍する。それが建築、設備、構造の3つの職種に分かれ、そこから更に、医療、オフィス、文化施設などおよそ全体で十種ほどに分岐する。最終的には一つのチームが50名ほどの構成になる。

 岡部さんが配属されたのは文化施設チーム。やはり50名ほどのメンバーの中で女性は二人だけだ。思えば、男社会の現場で、良く泣いていた。

 20年ほど前のことだ。軽井沢に文京女子学園のセミナーハウスを造るプロジェクトを担当した。まだ未熟で頼りない腕には重すぎる課題だったが、そこは若さに任せて「頑張るぞ!」と、目一杯胸を張った。

 人の手が入らない自然の中に、中庭を取り込み、宿泊施設をぐるりとまわす。講堂、浴室も自然との和合をテーマに順調にデザイン、設計した。ここはコンクリートのうちっぱなしに、ここには左官壁を配置して……、あらんかぎりのイメージを注ぎ込んだ。

 ところが、寒冷地はとても高度で細やかな建築の知識、技術を必要とする。ベテランで鳴らす現場の所長も辟易するような設計に、若い建築家は大目玉を喰らった。自然循環、アースカラー(自然本来の美しい色彩)、今でこそ、知られるようになったが、当時は、そういった概念は理解されない。

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