• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

真山 仁さん(小説家)

民主主義ですね(笑い)

 それが子供たちにとって本当にいいことかどうか議論させてほしい――、そう意見すると先生は、それはいいことだからやりなさい、と頷く、それでいつも学級会が始まります。  でも私が続けて「ここのこういうやりかたは良くないと思う」と問題を提起すると、そこは面倒を嫌うのが大半の小学生です。たちまち45人のクラスは、私対44人に分かれて……。

 それを3、40分かけてひっくり返す。これだけ聞くとクラスの嫌われモノのようですが、意外にも学級会で対立する相手ほど放課後には仲良く遊んでいて。したたかなものですね。

大人たちの反応は

 そんな調子ですから小学校の通信簿にはずっと、〈自分の正義を他人に押し付けるな〉と書かれていました。〈他人の気持ちを考えない人間はいくら正しい事を言っても駄目だ。正しいという事を伝えたければ、相手に分かるようもっと感情を抑えてしゃべりなさい〉と。これはいまでも、人生の座右の銘ですね。

その頃の読書は

 ポプラ社の『アルセーヌ・ルパンシリーズ』ですね。もうすごい好きで、夢中で読んでました。子供って自分を本の登場人物、主人公に重ねてドキドキしますよね。もちろんそれもあるんですけど、当時感じたのは、本当に上手に物語を作るなっていうこと。

 世の中には法律を守るという正義と、社会の方を正すという正義があって、この二つのバランスをどう取るかが大事というのがルパン全編を通してテーマなんですが、難しいことを子供に分かりやすく、しかもこんなに面白く作るってすごいなと思ってね。その頃から小説を書きたいと思い始め、学級新聞にいつも〈ルパン登場〉みたいな小編を載せて(笑い)。

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