野鳥と私たちの暮らし 第22回 黄色い大きな嘴の鳥 イカル
名の由来
イカルは、漢字で鵤と書きます。嘴が角のように大きく力強いからと言われています。また、斑鳩とも書きます。聖徳太子のゆかりの地、奈良県の斑鳩の里は、冬の時期には多数のイカルがいたことに由来するとも言われています。イカルという鳥の名が地名の由来となっていたのなら、古代の人々の鳥に対する愛着とロマンを感じます。
大きな実や種を嘴で回して割ることから、別名「マメマワシ」、「マメコロガシ」、「マメワリ」とも呼ばれています。
カッコウの托卵研究で巣探し
カッコウの托卵を研究していた40歳代の初めの頃、私は長野県の戸隠高原と飯綱高原でイカルの巣探しをしたことがあります。イカルの卵は、白地に黒い線模様を持っているからです。というのは、日本でカッコウに托卵される可能性のある鳥の中で、卵に線模様を持つ鳥は、ホオジロとイカルといったごく少数の鳥に限られるからです。
30年ほど前、長野県でカッコウに托卵されていた鳥は、主にオオヨシキリ、モズ、オナガでしたが、これらの鳥の卵にはいずれも線模様は無いのです。しかし、これらの宿主の鳥に托卵しているカッコウ卵の多くには、線模様があり、線模様の多いカッコウ卵ほど宿主により卵を巣から放り出されていたのです。ではなぜ、カッコウ卵は不利な線模様を持っているのだろうか?
この疑問にヒントを与えてくれたのが、1930年に発表された論文です。全国各地でカッコウの托卵を調べた石沢建夫さんは、この論文の中で信州と富士山麓ではホオジロへの托卵が多く見られ、ホオジロ卵に似た線模様を持つカッコウ卵は、この地域特産としています。