『足と靴と健康を考える シューフィッターの小さな奇跡』

足と靴と健康協議会/編

繊研新聞社/刊

本体1,600円(税別)

仕事を通した出会いと感動

 シューフィッターとは、足に関する知識と、靴合わせの技術を持った靴選びの専門家のことである。まだ、資格として認定されてから日も浅い職業だが、彼らの専門家としての意識は高い。本書では、シューフィッターの方たちの出会いを綴ったドキュメンタリーと靴選びの基礎知識がまとめられている。

 十二話からなる実話は、どれもシューフィッターの方たちの心のこもった対応と、お客さんの感動が伝わる話が続き、心温まるものばかりである。一話一話は短く、読みやすい。靴のことをよく知らないお客さんとの話では、優しく丁寧に、靴選びの誤りを正し、読み手にもそういえばと、自らの靴に関わる苦い経験を省みさせる。靴のことをよく知っているお客さんとの話では、お互いに靴のことを大切にする様子が語られ、こんな人もいるのかと感心させられる。日常的でありながら、普段はあまり気に止めない足のこと故に、靴にまつわるエピソードには新鮮な驚きがある。

 シューフィッターという仕事を通して出会えた人との関わり合いから、仕事に向かう真摯な姿勢、小さなことから社会貢献していく姿が表されている。仕事を通して感じる達成感や、やりがいが語られている。職業選びの参考だけではなく、働くことへの興味を引き出す内容で、キャリア教育の視点からも、発見がある。

 後半の靴選びのコツは、読者に靴や足の健康のことを考えさせてくれる。足の特徴や目的で、どんな靴を履くべきか、どう足を手入れすべきかを教えてくれる。改めて、自らの健康のため,足下を固める気にさせてくれる。

(評・中村中学校・高等学校司書教諭 岡田 富美子)

(月刊MORGEN archives2015)

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