• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

前田 司郎さん(劇作家・演出家・俳優・小説家)

当初はなかなか小説が完成しなかったとか

 小学校4年生のとき、〈物語を書こう〉という授業があったんです。宿題として原稿用紙4枚分が渡されたんだけど、実際これは小学生にとっては途方も無い分量です。これは大変だ、と、その夜懸命になって原稿用紙に向かった。それが、気づいたときにはいつのまにか8枚目を手にしていたんです。それで、なんだオレ、書けるじゃん……、って。

 それまで、自分にそんな集中力や文章を書く力があるなんてまるで知らなかったので、余計に、これはいける、向いてるぞ! という気持ちが強くなったんですね。で、じゃあ今度は宿題に関係なく書いてみよう、と意気込んだ。でもそうすると、どうもうまくいかないんです。4枚くらい書いたところで、「これは駄目だ」と破り捨ててしまう。ようやく最後まで書き上げられたのは、高校生になった頃のことです。

どんな内容の小説だったのでしょう

 他愛のない冒険ものだったと思いますが……、全然覚えてないですね。なにしろ冒険が始まる前に話が終わっちゃうことの繰り返しでしたから(笑い)。プロット(物語の設計図)を立てるとかそういうことも当時は全く知らなくてね。ただ、それをずっと続けていました。

 高校に入り大学に進んでも書き続け、書き溜めた短編をまとめては、賞に応募したりもしました。残念ながら賞は取れませんでしたが、大学の頃に書いた長編が講談社の編集の方の目に留まり、それがデビュー作になりました。

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