『けんぽうのえほん あなたこそたからもの 』

いとう まこと/文 たるいし まこ/絵

大月書店/刊

本体1,300円(税別)

文章が直接語りかけてくる

 今回は引用が多くなります。それだけ文章が直接語りかけて来るのです。ぐんぐん紹介したい気持ちにさせる一冊です。

 例えば、憲法の本質は、「つよくて、ちからのあるひとが、かってにルールをやぶったり、あたらしいルールをおしつけてきたら、いやでしょ。こまることもでてくるよね。だから、じてんしゃにブレーキがついているように、わたしたちのくにには、けんぽうがある。つよくて、ちからのあるひとたちにつけたブレーキ。それが、けんぽう。いちばんつよいルール」と。見事ですね。「例え」が生きているのです。

 それは、また、例えばですが(笑)、泥棒が10人捕まったけどそのうち一人は無実なのに「それが、だれかはわからない。さあ、どうする?」と、子どもにもよくわかる例を挙げて、考えさせます。そして、憲法が必要なのは、弱い側にいる人たちで、「そういうひとたちが、みんなとおなじにせいかつできるように。みんなとおなじにたいせつにされるように。けんぽうは、ちからをだす」と書いてあります。この「けんぽう」の大切さが伝わって来るでしょう。

 巻末の「憲法を子どもに手渡すきっかけとして」は大人向けですが、法律と憲法との役割の違い、多数決と多数派の暴走のこと、民主主義や人権のこと、個人の尊重のことなどが、やはり、とても分かりやすく、よく考えられた言葉で書かれています。

 色々な花の子どもたちの絵が、リズムを生み、モノクロの場面(戦争)をはさみ、「けんぽう」という贈り物を手に、自ら育って行こうとする、ストーリーをつむぎます。

 子どもたちはもちろん、特に選挙権を有する方たちへも、おすすめの「絵本」です。

(評・自由の森学園 図書館司書 大江 輝行)

(月刊MORGEN archives2015)

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