『少年少女に希望を届ける詩集』

曽我 貢誠・佐相 憲一・鈴木 比佐雄/編

コールサック社/刊

本体1,500円(税別)

今を生きる子どもたちへのメッセージ

 勤務校の入試には、最近すっかり珍しくなった詩の出題がある。そのせいか毎年「どうやって勉強したらいいですか」というご質問を頂く。勉強する側も大変だとは思うが、実はここ数年問題を作る側も大変になってきた。それは小学校高学年から中学生にかけて読むのに適した詩を見つけにくくなっているからである。図書館や書店を巡って児童書のコーナーを見てもなかなか新刊は見つからない。かつて盛んだった少年詩というジャンルも今は知らない人が多いのではないだろうか。 

 この本を手に取るとき、先入観から「昔の少年詩のアンソロジーかな」と思い、ページをめくった。まず始めは谷川俊太郎「学ぶ」。予想通りだと思いながら読み進めると、あさのあつこなど実に多様な作者が並んでいる。飛ばしていた前書きに慌てて目を通すと「少年少女に希望を届ける詩集」を作る呼びかけに賛同した詩人、作家、教育者の作品が中心になっているという。つまり今を生きる子どもたちへのメッセージなのだ。そう思いながら読むと、「この詩は高3に読ませたいな」「これを入学式で配ったらどうだろう」などと次々とイメージが湧いてきた。もちろん正直ピンと来ない作品もあったが、これは二百編あれば当たり前である。むしろ「学ぶ」「いのち」「希望」「家族の中で」など子どもに必要な10テーマから、自分の伝えたいことを探して、さりげなく見せるのがふさわしい。細々とした説明より、研ぎ澄まされた詩のことばの方が伝わることもある。

 もう一度子どもと詩の関わりを見直すきっかけとなる意欲作の刊行に拍手を送りたい。

(評・共立女子中学高等学校国語科 金井 圭太郎)

(月刊MORGEN archives2016)

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