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清々しき人々 第27回 生物を命名する規則を発明した カール・フォン・リンネ(1707−1778)

 数千メートルの深海まで潜行できる特殊な船舶の眼前には次々と未知の生物が登場することが証明するように、地球には何種の動物や植物が棲息しているか不明です。しかし、ここ一〇年間だけでも、これまで未知であった動物や植物が二〇万種、すなわち毎年数万の生物が新規に発見されており、そのような状況を背景にすると、最小でも数百万種、最大では数千万種が棲息しているのではないかと推定されています。

 それらのうち、これまで人間が発見した生物は哺乳動物が約六〇〇〇種、鳥類が約九〇〇〇種、昆虫が約九五万種、植物が約二七万種であり、それ以外の生物を合計しても一八〇万種程度で、人間にとって既知の生物は全体のほんの一部でしかありません。この人間が発見した既知の生物には名前が付与されていますが、現代にまで利用されている命名の規則を発明した一八世紀の偉大な博物学者を今回は紹介します。

博物学が花開いた一八世紀

 その博物学者とは、文学・科学・政治・法律など広範な分野で活躍したドイツの偉大な人物J・W・フォン・ゲーテが「シェークスピアとスピノザより以後、自分にもっとも影響をもたらした人物」と賞賛しているカール・フォン・リンネです。このリンネが活躍する一八世紀を理解するためには、ヨーロッパ社会が未知であった地球の広範な地域に急速に進出していった一五世紀以後の世界の潮流を概観する必要があります。

 一五世紀最後にC・コロンブスが西回りでアメリカ大陸に到達、V・ダ・ガマが東回りでインドに到達して以後、ヨーロッパの視点から地球は一気に拡大し、世界に進出していった各国の帆船が各地から未知の動物や植物を採集してきました。当初は手当たり次第に物珍しい動物を捕獲し、食料や医薬に有用な植物を採集するという状態でしたが、次第に未開の土地の風土と動物や植物との関係を研究する方向に発展していきます。

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