『中高生のための本の読み方』大橋崇行さん
選書のポイントは
中には、敢えてちょっと大人向けの本なんかも入れてあるので、一見すると、コレ中高生に読めるかな? と感じる人もいるかもしれないですね。でもたとえ、そのときは読後にピンと来なくても、大人になって何かの拍子に読み返したとき、その印象の違いにビックリすると思うんです。そういう面白さや気づきって、中高生のときに読んでおかないと起きないので。そんな意図もあったりしますね。
日本の読書事情の問題点は
日本の2、30代は、人生でも特に本を読まない時期なんです。これは本当に社会的損失で、例えば、欧米諸国や中国なんかでは、その年代は結構な読書量を積んでいます。逆に言えば、これだけ読書が人生を俯瞰して切れてる社会って珍しくて。というのも、本は人間力を育むのに不可欠なツールなので、どこの国でも一生を通して読まれるんです。これは、ちょっと面白いデータがあって、文化庁が5年に一度行っている読書に関する世論調査があるんですが、それによれば、日本は十代が一番読んでいて、次が70代だっていうんです。驚きですよ(笑い)。
問題の根っこはどこに
教育の現場から見ると、今の中高生や、2、30代にとって、本を読むのは勉強というような感覚があるように感じます。で、この国って、結構、勉強を嫌々やる文化圏じゃないですか(笑い)。でも、本来、勉強って、まずそれに興味を持つことから始まって、対象にどうアプローチするかという手段なわけで、つまり極めて主体的なものなんです。逆を言えば、そこがないと続かない。勉強ヤだなとか、授業中寝てたいナ、というのが入り口なのが既に問題なのかもしれませんね。ただ、最近はフィンランド式やPISA型読解力(OECD(経済協力開発機構)による効果的に社会に参加するための読解力)といった新しい教育方式も取り入れるなど、国語教育の現場も大分、雰囲気は変わってはきています。
読書の一番の効用は
大学進学率が6割に近づく一方で、中学、高校で学生生活を終える人たちも沢山います。学校を出た後は、当然、何かしらの仕事に就いて生きていくわけですが、大抵の場合、そこでまた勉強をする必要が出てきます。大学進学後もそうですが、結局、そこから先の勉強って、勉強=本を読む、だと思うんです。資格試験ならただテキストをやっていればいいけど、生きているとどうしてもそうじゃない部分の学びが必要になってくる。そうなったときに、自分に必要なもの、足りないものを学ぶには、やっぱりテーマに沿った本を読むしか方法はない。そうした将来の読書環境を見据えたとき、中高って実はとても大事な準備期間なんです。そう考えると、読書というのが、ただのその場限りのものじゃなくて、それこそ生涯学習なんだ、というのが見えてくる。20代以降の自分の生き方に直結することだと思うし、そこが読書の一番大切な部分ですね。