• 教育のミライ
  • 各界の識者・教育者が日本教育の未来へ向けて提言する

『18歳までに知っておきたい法のはなし』神坪浩喜さん

子ども向けにどんな工夫を

 やはり、どうしても難しくなりがちなので、出来るだけ分かりやすく、面白く読んでもらえるようにと頭を捻りました。普段、法教育の授業でやるように、身近な例を出し言葉もできるだけ簡易なものにする。専門用語も簡単な言葉に置き換えて……。あとは、小学生に教えるとき、ケーキの分け方を題材にするんだけど、これも採用した。3人で公平に分けるのには、どうすればいいか――。単純に三等分もいいけど、それぞれに事情があった場合、それに応じて分量を変えることもあるよ、と。紋切り型が必ずしも公平とは限らないというのを体感してもらう仕組みです。漫画の挿絵も随所に散りばめ、できる限り取っつきやすいようにと手を尽くしました。

本で一番伝えたいことは

「知識としての法」というよりは、法を通してモノの見方、考え方を身に着けて欲しいということですね。これはもう実践しかなくて、法教育なら、模擬裁判をやってみて、検察側に立ったり、弁護人側に周ったりして、都度、証拠を吟味しながら有罪か無罪かを決めていく――。個人的に一番おススメなのは「調停」です。私は、弁護士以外に調停委員も兼任しているんです。弁護士が依頼人の利益のみに注力する一方、調停人は間に入るのが役割です。お互いの言い分を検証しながら、双方にとって良い解決はないかと模索する……。バランスある対話、思考を凄く要求されるわけです。法の概念を体感できるし、多面的、多角的な視点も獲得しやすい。是非、試してみて欲しいですね。

かみつぼ ひろき 弁護士(仙台弁護士会所属)/あやめ法律事務所所長。日弁連市民のための法教育委員会委員、仙台弁護士会法教育検討特別委員会委員。1968年、北九州市生まれ。東北大学法学部卒業。著書に『弁護士がここまで教える よくわかる離婚調停の本』『セクハラ・パワハラは解決できる!~民事調停という選択肢~』『本当に怖いセクハラ・パワハラ問題』等がある。

(月刊MORGENarchives2020)

関連記事一覧