【教育レポート】「ガザの現実を前に 何が問われているか」
パレスチナ(ガザ)の歴史的変遷
もともとこの地は、イスラム、キリスト、ユダヤ教、3つの宗教の聖地だった。千年ほど前、3つの宗教の教徒たちはここで平和に暮らしていた。それが変わったのは16世紀の時代、オスマントルコが欧州の列強に押し込まれ、最終的にはフランスとイギリスがこれを分割統治するという話になった。そして、そうなった場合、パレスチナは国際管理にする――、これには、この地は3つの宗教の聖地なので中々支配するのが難しいだろうという事情があった。また、それと並行してイギリスはアラブ諸国の戦争協力を条件にオスマントルコを倒した暁にはパレスチナ周辺を与えるという約束をした。一方でユダヤ人とも密約を交わした。これが世にいう「イギリスの3枚舌外交」で、それに端を発して様々の戦争が起こり、結果として今の紛争状態に繋がっている。
2007年以降、ガザはイスラエルの完全封鎖の下に置かれ、200万人が自由のない状態におかれている。そういった背景から今、「将来の希望を見出せない孤独なパレスチナ人の捨て身の抗議」(奈良本英佑)が起きている……。今起きているのは単純な宗教対立ではない、そういった一連が高度に政治的問題によって利用されているかたちだ、と述べた。
ユダヤ人とパレスチナ人、共存の道は――いま私たちにできること
ハマスの無差別攻撃はもちろん許されるものではない。ただ、1947年以来、パレスチナの人々は故郷を追われ、76年間に渡り抑圧されてきた。国連の事務総長・グテーレスも「ハマスによる攻撃は真空の中で起こったのではない。パレスチナの人々は56年間息のつまるような占領下に置かれてきた」と述べている。今、パレスチナでは国連の建てた学校がイスラエルによって頻繁に打ち壊されているという。将来の「ハマス」をつぶすという名目がそこにはあるが、学び舎を破壊された子どもたちと壊す側のユダヤ人……、このままでは負の連鎖は連綿と続いていくだろう。問題は、なぜ、第二次世界大戦でホロコーストの憂き目にあったはずのユダヤ人が、このようなひどい仕打ちをするのか。それを止めるためにも今あらためてホロコーストの根源にある「差別感情」に目を向ける必要があるのではないか。
ガザは元々3つの宗教が共存する聖地だった。今もう一度手を取り合って暮らすことを模索できないだろうか――、そう言って、25年前に始まったイスラエルとアラブ人が共に学ぶ学校の取組みを紹介した。日本とイスラエル、それぞれ中東と東アジアのアメリカの拠点という共通点もある。今、目の前にある紛争を他人事にせず自分事にして考えることが必要だ、と力を込めた。講義は後半、古居みずえさんが監督する「ぼくたちは見た―ガザ・サムニ家の子どもたち―」が流され、学生たちは手元にメモを取りながら熱心にスクリーンを見つめた。