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【教育レポート】「死生学カフェ」

 裕子さんの体験を通して新たな死生観の地平を見ようと、つめかけた参加者たちを前に、まずは裕子さんはことの経緯を話し始めた。大学進学を間近に控え、春休みの箱根旅行を楽しみにしていた息子の横顔――。突然、訴えた頭痛にも、次男の高校進学準備に手を取られ万全の対応を取れなかったという自責の念。それを救ったのは、たまたま目に飛び込んだ息子の遺稿『「後悔先に立たず」の先にあるもの』だった。参加者を前に読み上げる声と原稿用紙を持つ手がわななくように震える。

 ホスト役の竹之内教授のインタビューと、参加者の声を挟みながらの問答がしばらく続き、やがてテーマは「よく生きるとはどういうことか」というものに移っていった。様々の意見が交わされる中で、一つの生と死が中秋の雲一つない青空の中に溶けるように煌めいて見えた。

(月刊MORGENarchives2023)

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