• 教育のミライ
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【特集】「不登校を考える」大越俊夫さん×中村俊さん

中村:国際的な認識から言うと、〝子ども自身の権利としての学び″ということになりますね。この考えの基礎を築いたのは、アンリ・ワロンやジャン・ピアジェといった心理学者たちです。第1次、2次大戦の悲惨さを契機に、ヨーロッパでは、〝子どもの権利を守ろう″という運動が起こりました。彼らの言葉を借りるならば、〝命というのは自ら成長する力を持っている″ということ、そしてそこに信頼を置く、ということですね。

 国や教育機関が、ただ上から詰め込むのではなくて、子どもの成長力に依存した教育があるはずだ、と。これが子どもの権利の原点だと思うんですよ。この考え方は現在、国連の『子ども権利条約』(18歳未満の児童の基本的人権を国際的に保障する条約)に引き継がれ、日本も条約を批准しているんですが……。私は、日本国内の教育は、現在もやはり非常に戦前の考え方が強いと思っているんです。明治から続く、〝国づくりのための人づくり″が連綿と続いてしまっている、と。命を持つものの成長力に信頼を置いてそれを育てる、という学びの本義が満たされていないのかなと感じています。

命の育て方はどこに

大越:塾を始めた当初から、「親の反省会」というのをやっているんです。わが子の不登校をまず親自身の接し方から省みようと。そういうことをしていると、客に説教するのか、子どもの味方をするのか、とえらい反発があるんですよ。でも、実際に、社会、学校の学力至上主義に追いたてられた子どもを家庭でも同じ思想で親たちがさらに追いつめてしまっている。

中村:本当に子どもたちに必要なのは、時間をかけて自分の育ち返しをすることなんです。根底に生きる力が湧いてくればなんでもやりますよ。必要となれば、それこそ受験勉強だってなんだってできる。問題なのは、その土台のところで、きちんと生きる力を育めなかった子どももいるわけだから。そこはやっぱり、その子の成長力が充実してくるまで待つ、ということをやらないとダメですよね。

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