【特集】「不登校を考える」大越俊夫さん×中村俊さん
大越:ヨーロッパにはロゴ・セラピー(患者自身が生の意味を見出すことを促す心理療法)というものがありますが、私は塾を始めた当初から、〝良い教師というのは良い刺激剤″と考え、子どもたちに問いかけることによって刺激を与えようと試みてきました。自問自答する能力を育てれば、自然、勉強にも向きますからね。しかし、それを見た親たちは「そんなことをするなら単語の一つも覚えさせろ」こうですよ(笑い)。
中村:70年代に宮城教育大学の学長だった林竹二さん(教育哲学者:故人)が、やはり子どもに問いかける授業というのをやっていて――。〈ソクラテスの魂の世話〉というコンセプトで、人間とはなにか――などと子どもに問いかけるんです。子どもは立ち往生しますが、とにかくなにか答えるまで待つ。すると、子どもは自ら答えを出すんですよ。この授業は、子どもたちに変化を与え、主体的に生きるエネルギーをもたらしました。現在、学校現場では行われていませんが、非常に大切な頭の土台づくりですよね。
大越:今、日本は少子化が騒がれています。貴重な子どもたちを簡単に切り捨てないで、しっかり受け止め育てる。そうしないと様々な分野の後継者もいなくなってしまう――そんなことも危惧しながら、日々、目の前の子どもたちと向き合っています。
(月刊MORGENarchives2016)