大門真優子さん(衣装デザイナー)

 大学は文化学院を選んだ。高校に入ってすぐのころ、大学見学をはじめた。自分の心にある数多の夢と進路を結びつけようというのがきっかけだった。そこで注目したのが「キャラクターを作る一部としての衣装作りを身につけられる場所」だ。それを学べる学校をと調べをすすめ、浮かんで来たのが文化学院だった。つまり大問さんは、将来を選択する上で、その入り口から、リーチの広い仕事の仕方を目指していた事になる。

「将来何をするか悩んだ時期があって。人にやりたいことを話すと、きまって、何がしたいか分からない、となっちゃう。見本の肩書きのないなかで、それをどう進んで行こうかというのは凄く悩みましたね」

 専攻したのは「映画・舞台衣装デザイン」。留学があること、ストーリー付きのファッションショーやそれが数多いことなどが選択の理由だった。この学校の、この学科を出たからこの職業になるのではない。今好きなことを、一番にやりたいことを選んだ結果だ。

 大学3年になるといよいよ留学がはじまった。行き先はアメリカ、ニューヨーク州立ファッション工科大学(以下FIT)。期間は1年間という長丁場だ。大学に入って最初の2年、はじめて触れる服の世界がとにかく楽しくて仕方なかった。が、その反面、それを目指すことに疑問も湧いた。あれもこれも全部やりたい――そんな「欲張り」な自分を服の世界は果たして表現しきれるのだろうか……。答えはまだ出ていない。国際線の窓から見える景色が小さくなり、やがて透明な空の色にとけていった。

 FITは州立大学である。アメリカの州立大学の特徴は、なんといってもその多彩なカリキュラムだ。当然、FITもファッション以外にさまざまの科目があった。ビジュアルディレクションにサイエンスフィクション……、あるいはイラストレーションの講義まで。少しでも興味が湧けば、大門さんはとにかく足を運んだ。留学前期はなるべく多くの授業に顔を出す。そうして自分の興味を見極めたら、後期にはそれを深める選択をする――。計画的に過ごす異国の日々は、未来図の輪郭を次第にくっきりとさせていく。充実の1年はあっという間に過ぎて行った。帰国した大門さんは、すぐ大学院への進学を決めた。

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