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研究授業「生きること、死ぬこと、社会的責任を考察する」杉田孝之さん

終わりに

 授業のあと、二人の生徒に感想を聞いた。レコーダーを向けるとマスク越しにもはにかみながらハキハキと答えてくれる。――考えさせられることが多かった。判断が難しい……、そう言うと女生徒は、少し言いよどんで、事件のことは知っていた、被害者本人の意思がすべてなのかというのには葛藤があった、と話した。――一番考えなきゃいけないことかなって……、先生の授業を受けていていつもそう思っている、そう切り出した男子生徒は、この病気以外にも貧困や様々のことに悩んでいる人がいる。そういうことをひっくるめて、まず正確な知識を持たないと何も始めらない。何が正しいかは分からないけど、少なくとも自分の中で納得する意見を出すためにも、しっかりと学んで考えるのが大事だと思う、と頷いた。

 最後に杉田教諭に水を向けると、岡部、谷川両氏は強い、個人としたらもちろんエールは贈りたい、でも一方で授業者としてみたら、自己決定は万能じゃないぞ、というのもある。他の選択肢が採れるような社会状況の早期の整備が望ましい……、眼差しはどこまでも優しかった。

(月刊MORGENarchives2020)

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