蓮見 孝之さん(アナウンサー)

『NEWS23』、毎週月曜日から金曜日まで、23時台に放送される、TBSテレビ局の帯番組を思う時、2008年までメインキャスターを務めたジャーナリスト故筑紫哲也氏の姿を、浮かべる人も多いだろう。現在、メインキャスターに膳場貴子、アンカー岸井成格の二人を据え、落ち着きを見せるスタジオの風景に、ひとり情熱をたぎらせるアナウンサーの姿がある。サブキャスター蓮見孝之さんは、今、報道番組に理想を持っている。

 蓮見少年が育ったのは、埼玉県浦和市。近年、大宮、与野の両市と統廃合し、さいたま市浦和区となったが、いわずと知れた、サッカーの強豪地域だ。土地柄、幼い頃から、周りの子供たちにまじって、熱心にボールを追いかける毎日。誰かに将来の夢は、と聞かれれば、友達と口を揃え、勢いよく「プロのサッカー選手!」と答える。小学校3年生になると、本格的にクラブ活動に入部、以降、高校の3年生になるまで、どっぷりとサッカー漬けの日々を送った。入学した浦和市立高等学校は、サッカー強豪校であり、進学校でもある。当時を振り返り、勉強にはそれほど自信はなかった、サッカーばかり真剣で、と笑うが、高校2年次には、自分の力はプロに挑戦するレベルに遠く及ばない、と、少しずつ、別の将来を模索し始めた。

 大学に進学する、そう考えた時、まず将来何をしたいのか、そこから考えを始めた。サッカーに関わる仕事ができれば幸せ―漠然とした思いを胸に、書籍を開き、様々な職業を調べる。すると、いくつかの仕事に突き当たるが、〈一生続けられる仕事がいい〉そう条件を付け、さらに絞り込む。教師はどうだろう、教える側に立って、自分の果たせなかった夢を子供たちに託し、関わっていく、いや、地域の少年サッカーチームに携わろう、それともスポーツメーカーに勤務しようか…。選択肢は多くあった。しかし、その中で、ひと際輝いた職業は、やはりアナウンサーである。テレビ局に勤めれば、大きな大会に関わる機会も増えるんじゃないか、期待に促され、徐々に進路のベクトルは、アナウンサーを強く指し示す。

 大学は大学サッカーの名門・法政大学経済学部へ進学した。高校、大学と、推薦で合格を手にし、今回も吉報を両親に届けると、わが子の将来が、またひとつ明るくなったと、二人の顔はほころんだ。大学に上がった青年は、様々な資格取得に取り組んだ。サッカーのc級コーチライセンスに4級審判員、テレビの企画にも、積極的に参加する。勉強して何かを掴み取るという経験が少なかったから、当時の心境をそう顧み、「でもやっぱり、アナウンサーの試験が人生で一番大変でした」と笑った。

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