• 教育のミライ
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『18歳までに知っておきたい法のはなし』神坪浩喜さん

迫る18歳成人、問題は

 一番は、「未成年者取消権」の喪失です。「未成年」として保護される権利が、前倒しで無くなることになることになるわけで、それまでに一定の知識を持つことがより重要になる。これまでも、一般に新成人は犯罪に遭いやすく、狙われる傾向があった。「法」と聞くと目に見えない遠いものと感じるけど、実際はすぐ身の回りに転がっているんです。誰しも、必ず何かしらの契約をして生きている。そこを意識しないからトラブルに巻き込まれる……。だから、この本はその抑止力の役割を強く意識しています。少しの法を知るだけで、モノの見方がグッと立体的になる。多面的な視野を持つことで、トラブル防止、あるいは解決法が見出せ、結果として幸せになることができます。他方、法の無理解を放置すれば、成人年齢の引き下げは数多くの不幸を生むでしょうね。

法教育の核心は

 「弁護士の仕事ってどうですか」――授業をしていると、よく生徒にそんな質問を受けます。そんなときいつも私はこう答えます。「どうすれば公平なのかを追い求める職業です」。絶対的な正義や正解って実は存在しないんですよ。自分に主義、主張があるように、必ず相手にも言い分がある。それを受け止めながら、お互いのための正義と公平を見つけていく……。法教育の目的は、そうした正解のない問いを考える力をつけるところにあります。これは実は、従来の学校教育に欠けている部分で、とかく学校では、×か〇で答えが決まる。でも、社会には白か黒ばかりじゃなく、灰色の解決も沢山あるんです。そうした場面に対する解決の鍵が法教育にはある。

法教育で学ぶ思考法とは

 法を知らずに生きると、国や権力に統治されることで生まれる客体意識、つまり受動的な態度が強まります。そして、その思考停止は、多くの不幸を生んでしまう。そうならないよう、きっちりと法を知った上で国民主権を握りしめ、主権者として主体的に生きていく。裁判員裁判もそうだし、選挙の投票行動もそう。例えば投票なら、それに繋がる「表現の自由」というのが根幹にあります。誰かに任せるのじゃなくて、自分の頭で考えて、自分の責任で行動する。社会的にコミットしていく。そうすることで必ず人生は豊かになる。

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