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【教育レポート】「死生学カフェ」

 10月中旬、静岡県静岡市で死生学カフェが催された。死生学カフェとは〈生きること死にゆくことかけがえのないものを失うことなど生と死にかかわる多様な課題について出会いと探究の姿勢を大切にしながら対話を試みる場所(死生学カフェHPより原文ママ)〉のこと。代表を務めるのは静岡大学教授の竹之内裕文さん。2015年3月の「あなたにとって、死ぬとはどういうことか?」を皮切りに始まったが、49回目を数えるこの日は、コロナ禍後の初の対面式とあって会場には静かな活気が満ちていた。

 ゲストに招かれた石田裕子さんは、ちょうど一年前に高校生だった息子の龍之介さんを突然の病気で失った。病名は「急性出血性白質脳炎」――急性散在性白質脳炎 (ADEM) の劇症型として知られ、ひとたび発症すると1~9カ月で患者のほとんどが死に至るという極めて危険な難病だ。龍之介さんも発症するやすぐに昏睡すると、そのまま、ほぼ意識を取り戻すことはないままに約一月後、この世を去った。裕子さんは、そんな我が子の死をどうしても受け止められず、昼に夜に、現実にWEBの中にその姿を探し求めた。

 生前、文芸部に所属していた龍之介さんはいくつかの小説を遺していた。遺品整理の最中にそれを見つけた裕子さんは、やがて小説を通して息子と会話をするようになる。そのやりとりをネットの中でブログとして紡いでいると、そこに新たな息子の存在を見つけた気がして母はようやく息をついた。

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