土井 敏邦さん(ジャーナリスト)

映画は最後沖縄へバトンを

 よく、識者が沖縄と福島の共通点を指して「犠牲のシステム」と言ったりする。この国では、本土あるいは中央が潤沢で安全な生活を享受するため、いつも誰かが犠牲になっている。それが基地に埋まる沖縄であり、電気エネルギーの供給源だった福島なんです。そういう意味では二つの地域には非常に類似性がある。他にも似ている事例があってそれが水俣です。国の下敷きになって被害者が不当に阻害される姿……、この映画は福島を通して、国のあり方そのものを普遍的に問いかけています。もう一つは、原発問題ではなく、個人を撮ることで、見る人それぞれに自分に引き寄せ、重ねて欲しかった。対岸の火事で終わらないでほしいという思いが込められているんですよ。

どい としくに 1953年、佐賀県生まれ。1985年より30数年、断続的にパレスチナ・イスラエルの現地取材。2009年、ドキュメンタリー映像シリーズ『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成。第9回石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞、キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門第1位。他の作品に『ガザに生きる』『異国に生きる―日本の中のビルマ人―』『“記憶”と生きる』『パレスチナからフクシマへ』『飯舘村―故郷を追われる村人たち―』など多数。

(月刊MORGENarchives2019)

関連記事一覧