志賀 勝明さん(漁師)

活動をはじめてみて、周りの反応は

 最初、福島民報で取り上げられたときは、やっぱり地元の反応は鈍かったですね。でも、それが東京新聞で取り上げられるとたちまち火がついて。とはいえ、日本国憲法の原案を作った「鈴木安蔵」という名前は、大抵の教科書には出てこないので、そこは難しかったですね。現行の教育では、小学校の高学年になると「基本的人権の尊重」をはじめとした日本国憲法の特徴は習うけど、その大元に関わった日本人のことには一切触れない。だから当然、誰も知らないんです。知っているのは、大学の教授か弁護士の先生たちだけで、それ以外の人たちはまったく知らない。私はそれを小高の街を案内しながら痛感して……。この活動の本質はそこで、今の素晴らしい憲法の原案を書いた日本人のことを、もっと多くの人に知ってもらいたいわけなんです。

日本国憲法にどんな思いを

 会を立ち上げて感じるのは、会員になる方々の年齢が比較的高いということです。その多くが80代で、中には教授さんなんかもいたりする。で、そういう方々がどうして会員になってくれるかといえば、恐らく小さい頃の戦争体験が大きいと思うんです。たとえ自分が戦争に行ったわけではなくても、戦争になればどういう社会になるのかとか、どんな状況になるのかは分かっている。特に満州からの引揚者の経験は想像を絶するものだったと聞きます。そういう過去を振り返ったとき、あらためて今の平和の貴重さ、大切さを肌で感じているのではないか、平和憲法の大事さを分かっているんじゃないのかと思います。これはなにも単なる私の想像というわけではなくて、実際、本部に届く手紙には、言葉では伝えきれないほどのそういった思いが目一杯詰め込まれているんです。手紙を読みながら私も、自分には徴兵経験はないわけだけど、生まれてから今まで徴兵を受けることなく戦争にも行かずに生きてこれた、それ自体が凄く貴重なことだったんだな、というのにあらためて気づかされて。

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